だいかく病院

歯にまつわるお話②2020.03.30

インフルエンザ対策に歯磨きを

インフルエンザ予防にはうがい、手洗い、マスクと言われますが、もう一つ効果的な予防方法があります。
それは歯磨きです。
インフルエンザウイルスは実はウイルスの力だけではヒトに感染することはできないのです。ヒトの体に入ってきたウイルスは実はそのままではヒトには感染することができません。ウイルスの表面が私たちの呼吸器や腸管にあるプロテアーゼ(酵素)に触れることで活性化され,感染する能力を持ちます。また、ウイルスが私たちの細胞から外に出て他に感染しようとするときにも私たちの体にある別の種類の酵素(NA,ノイラミニダーゼ)が利用されます。
気道にあるこれらの酵素と同じものが最近の研究で口腔内細菌叢(オーラルフローラ)からも多く見つかりました。口の中の細菌の一部はインフルエンザウイルスを活性化させて私たちに感染するリスクを高めてしまうことがわかってきたのです。インフルエンザは細菌との混合感染によって増悪、重症化することが知られています。
また、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬の効果は細菌存在下で顕著に減弱します。これは抗インフルエンザ薬がNA(ノイラミニダーゼ)を阻害することで効果を発揮するのですが細菌には多くのNAが含まれているので薬剤の効果を減弱してしまいます。
ではどのような歯磨きが効果的なのでしょうか。オススメの方法としては朝起きてすぐに歯を磨くことです。夜眠っている間は唾液の量が低下するので自浄性が低下し、口の中の細菌は増えます。そのため朝起きた時が一日のうちで最も口の中の菌が多い時間帯です。誰でも朝起きてすぐは口臭がすることがありますが、これは口の中の細菌が増えているサインです。
うがいだけでは歯の表面にしっかりと付着した菌を覗くことはできません。オーラルフローラは歯の表面にバイオフィルムを形成し唾液に流されないようにしっかりと固着しています。このバイオフィルムはなかなか強力なバリアーで、一旦形成されると中には薬剤や消毒薬をほとんど通しません。バイオフィルムは歯ブラシや歯間ブラシで物理的に壊して取り除くことが最も効果的です。また、舌の上にも菌はたくさん付着しています。舌磨き専用の器具でなでるように優しく清掃してください。粘膜は傷つきやすく繊細なので決して手荒に扱わないでください。5回程度優しく舌の表面を舌ブラシでなでる程度で十分です。

朝起きてすぐの歯磨きでインフルエンザを予防して元気に過ごしましょう。